ステンレスミラー (2007年度)
これはステンレスの素材を楕円振動切削という手法を用いてダイヤモンドバイトで切削した鏡です.
本来、炭素の塊であるダイヤモンドはステンレスなどの鉄系材料と化学反応を起こしやすく,通常鉄系材料の切削加工には不向きとされてきました.このような素材と刃物が化学反応を起こしてしまう現象を「刃物が食われる」と表現しています.
そのため,鉄系材料の加工にはさらに固い超硬合金などが使用されてきたのですが,刃の先端の鋭利さではダイヤモンドには敵わず,鏡のようにきれいな表面に仕上げることはできません.
しかし,楕円振動切削という加工法を用いることでダイヤモンドが食われることなく,鏡面に仕上げることができました.
注:この楕円振動切削加工法には楕円振動切削装置というものを使用するのですが,この装置自体は市販されているもので装置の開発自体は超精密ユニットは行っていません.
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要求精度 |
達成精度 |
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材質 |
ステンレス合金 SUS304 |
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形状 |
直径5mm 平面 |
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表面粗さ |
RMS 10nm |
RMS 9nm |
楕円振動切削について
楕円振動切削は図のように,楕円または円の軌跡を描きながら材料を削っていく加工法です.
- (a) 工具が試料から 離れている状態です.この間に冷却と潤滑を行います.
- (b) 材料に工具があたり,切り始めます.
- (c) 一つ前のサイクルでできた切りくずに工具があたり,上に向かって切りくずを押し上げ新たな切りくずを排出します.
- (d) 工具が切りくずから離れていきます.