DPFテストマス (2008年度)

質量をもった物体が加速度運動するとき,時空の歪みが発生します.その歪みが波として伝搬してきたものを重力波といいます.
この重力波は一般相対性理論によって存在することが予想されていますが, まだ実際に重力波を観測できた例はありません.その重力波を観測するためにDPF(DECIGO Path finder)というプロジェクトが進行しています(2008年4月現在).

 重力波は時空の歪みの波なのですが,「空間が歪む」ということは具体的には「距離が変化する」ということです.そこで,ある二点間の距離を常に測っていれば重力波が来たかどうかが分かります.
しかし,重力波による時空の歪みはごくわずかな量なので簡単には測定できません.測定する二点間の距離が長ければ長いほど測定しやすくなりますが,現存する地上の設備(二点間の距離約4km)では成果は出ませんでした.
そしてついに,宇宙に人工衛星を打ち上げて実験することになりました.衛星間の距離は約1000km,三台の衛星を打ち上げて正三角形に配置されます.

これは,DPFに搭載される距離の基準となる部品のテストモデルです.
六面全てが鏡面加工されており,位置制御のための参照ミラーと静電アクチュエータの双方の用途で使用されます.

  1. 重力波はブラックホールや中性子星などの高密度天体の激しい運動によって生成されます.
  2. 重力波は図のように,空間自体を伸ばしたり縮めたりを繰り返しながら伝搬してきます.
  3. 歪んだ空間の中でも光の進む速度は変わらないので,レーザーを使った計測をすることで空間の歪みを検出することができます.

二枚の平板を離して並べ,回路につないだものをコンデンサーと言いますが,これはアクチュエータ(駆動力)として利用することができます.
コンデンサーに電圧を加えると,二枚の平板は離れていて電流が流れることができないので,そこに電荷が貯まります.
ここに貯まったプラスとマイナスの電荷が引き合うので,二枚の平板に互いに引っ張る力が働きます.これを駆動力として利用します.     今回の場合は下の図のように鏡面加工したテストマスの面を電極の片側として利用して,それを六面全てで行うことで位置の制御を行います.  

  要求精度 達成精度
材質 アルミ合金 5052
形状 一辺70mmの立方体
表面粗さ 指定なし RMS 10nm
形状精度(ミラー単体) 指定なし PV 0.2〜0.3μm
直角度 0.1mm 約7μm

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